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10月21日(秋晴れ)  ブライアン ジョーンズのストライプスーツ



百歳堂日乗



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BrianJones
百歳堂 |  ブライアン・ジョーンズのストライプスーツ





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遠い日々のお話をしましよう、それは、私がまだ10代の頃、ロンドンの街がきらきら輝いていた時代です、いま、多少美化されて思い出せば、それは少年の私にとってルイスキャロルの「不思議な国のアリス」のように、街自体がわくわくした驚きと冒険に溢れていた時間でした、


スインギングロンドンを語るには忘れてはいけないポップなデパート、BIBAのルーフトップには不思議な屋上庭園とレインボーレストランがあり、その食料品フロアにはウオーホールのポップアートから抜けでたような巨大なスープ缶を模った棚に本物の缶詰スープが詰め込まれていて、「レコードショップ」にはサイケデリックというキーワードでカラフルに描かれたワクワクするような紙のレコードジャケットが並び、道端ではキノコやエアプレーンなどのポップなバッジがキャンデイのように売られていて、ソーホーのライブハウスの暗闇でジミ・ヘンドリックス&ジ・エクスペリアンスが衝撃的なデビューギグを披露するや、アっという間にロックヒーロに駆け上り、、、私の世代はそれらをリアルタイムで体験したジェネレーションです、「不思議の国」というのも強ち大げさとも云えません、




なにしろ、ビートルズがサージェントペッパーをレコーデイングしている様子を「ライフ」などの店頭に並ぶ雑誌で眺めていた世代です、10代の少年が影響を受けないはずはありません、

そして、街にはそんな少年を魅きつけてやまない今まで見たことも無いような店が、この時代のアイコンのひとつマッシュルームのように原色の笠も鮮やかに現れ始めていました、(もちろん、10代の私にお小遣いの余裕もなく、実際には「ケンジントン マーケット」などの屋台の店で、ファッション学校やアートスクールの学生が手づくりした服やキノコを模ったポップなバッジなどを親に隠れて買っていました、ただこれはこれで面白いモノが多かったし、その中の幾人かはデザイナーとして有名にもなっていきました、)

私のお気に入りは、キングスロードにあった「グラニー テイクス ア トリップ」という店で、なにより店が格好よかった、或る時は壁一面にポップなマリリンモンロー(ジーン・ハーロー?)が描かれ、またある時はナバホ族の戦士、ダッジサルーンの前半分だけが飛び出ていたりと外装がころころ変わっていくのも刺激的でした(この外装がテーマーに合わせて変化していくというのは、後年のマルコム・マッカレムとビビアン・ウエストウッドの店、「セデイショナリーズ」とか「ワールズエンド」に影響を与えたとのだと思います)






f0178697_3301813.gifこの店は、仮縫いなしのビスポークもやっていて、ホーズ&カーテイスにいたジョン・ピアスが腕を振るっていました、

トミーナッターをはじめ、キッパータイという幅広のネクタイを広めたマイケル・フィッシュの「Mr.フィッシュ」、優れたテーラリング技術を持っていた「ブレイズ」とか、「ロックセレブリテイー」のためのテーラーたちが生まれたのもこの時代です、後年の「ニュービスポーク」という言葉は、正確な意味と、その革新性から考えれば、むしろこの時代にこそあてはまるものだと思います、


旋風のように舞うスインギングロンドンの街に巻き込まれていた少年時代の私が、憧れていたのがストーンズのブライアン・ジョーンズの颯爽としたストライプスーツです、


ブライアン・ジョーンズ自体には、個人的な思い入れはあまりありませんが、居並ぶ「ロックセレブリテイー」の中では、当時、何かオスカー・ワイルドの系譜を継ぐ「ダンデイズム」を異質に匂わせていました、確かに時代のデカダンとファッションデイレッタントも納得させるエッジーな洒脱を着こなしに感じさせて他のロックスターとは違っていました、多分、本人もそれを意識していたのだと思います、






ブライアン・ジョーンズのリージェントスタイルのリーファダブルのストライプスーツもこの時代の魅力を感じさせますが、写真のちょっとエドワーデイアンなシングルスーツが気に入っていて、後年、多少のノスタルジーからソーホーのテーラーで作らせたことがあります、

つくってみると、デイテールは少し違いますが、意外にバニー・ロジャーのスタイルに共通する、エドワーデイアンクラッシックなのですね、ブライアン・ジョーンズの本物も、しっかりとしたテーラリングのビスポークです、

時代へのトリビュートも込めて、「Made to Measure」の第3弾としてこの「ブライアン・ジョーンズ モデル」を取り上げることにしました、請うご期待を、、、


百歳堂日乗





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by momotosedo | 2008-10-21 02:58 | ■dandy style

10月12日   ゲイリー・クーパーの6ボタンスーツ



百歳堂日乗



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GaryCooper
百歳堂 |  ゲイリー・クーパーの6ボタンスーツ





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サビル ローをさ迷った、そう、20代の若い私はこの写真を手にしてサビル ローをさ迷った、(この辺りの事情は、こちらを、、)多分初めて、どうしてもこういうスーツを手に入れたいと思い込んだのが、このゲーリー・クーパーの6ボタンスーツだった、

それまでも、スーツを誂えてはいたけれど、正直に言ってそう意識的なものではなかった、

幸運だったのは、当時のサビルローは若者を暖かく街全体で迎えてくれる度量があったことで、行く先々のテーラーのおじさんたちだけでなく、「仕立て屋好き」の古参の顧客のおじさんたちからも真面目に、かつ愉しげにアドバイスをもらった、「服の番人」と呼ばれるこの通りには、かつて不思議な連帯感があったのだ、良い時代だった、

結局、そのおかげで私は一人のパーソナルテーラーと出会い、「目から鱗」で、それ以来、他人の姿に憧れることもなくなった、自分のスタイルを探し始めたのだ、


さて、この思い出深いゲーリー・クーパーの6ボタンスーツ、

先ず、当時、若手スター候補であったゲーリー・クーパーという肉体に合っている、クーパーという役者は、ハリウッド俳優のなかでも恵まれたプロポーションの持ち主だった、広めにとったステイトメントショルダーからシェイプしたウエスト、何より、スーツ姿から颯爽としたエネルギーが伝わってくる、この「颯爽とした」格好良さが、当時の私を捉えたのだと思う、

いまの私なら、同じ6ボタンスーツでも、この写真のようなステイトメントショルダーではなく、もっとなで肩にみえるソフトでエレガントなショルダーラインを選ぶと思う、でも、新人俳優だった頃のゲイリー・クーパーには、確かにこのステイトメントショルダーが溌剌としていて似合っている、しかし、これはクーパーという長身痩躯の肉体と、その若さのうえでバランスが取れているとも云える、事実、壮年期のクーパーのスーツは、写真で見る限り自然ななで肩の「ナチュラル」ショルダーに変わっていく、

ショルダーラインは拘るところで、基本的には「優雅ななで肩」が生涯に渡ってそのエレガンスが長続きするものだと私は考えている、人体の肩のクセは様々で「ナチュラル」で「優雅に」見せるためにはあらゆる工夫が必要となってくる、それはカットの工夫、縫い、資材の作り方とテーラーの持てる技巧と創造力を結集してつくられるいわば「見せ場」なのだ、




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by momotosedo | 2008-10-12 04:53 | ■dandy style

10月6日(秋雨) セシル・ビートンとカバートコート


百歳堂日乗



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CecilBeaton
百歳堂 |  セシル・ビートン とカバートコート




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セシル・ビートンという贅沢感  セシル・ビートンに関する文献は幾多もあるので、そのバイオグラフィーについてはここで重ねるつもりはない、

ビートンに私が惹かれるのは、やはり、その出自とかライフスタイルとか美意識を背後にもつ「眼」で、それは計算では適わないビートンそのものの贅沢で熟れた「視点」だと思う、

同じようなタイプに、ラルテイーグを思い出す人もいるだろうが、ラルテイーグの贅沢さが無垢な豊かさの輝きに満ちているとするなら、ビートンのそれは、より現代的で、都会の裏表を知りつくした華やかさがある、いわばノエル・カワードのソフイステケーションのようなものだ、

それは、劇場の幕間に女優の元に届けられた薔薇の花束のようなものであり、或いはシャンパングラスを片手に囁かれる本日のパーテイのホストへの辛辣なジョークみたいなものである、


都会暮らしで研ぎ澄まされた贅沢には、一筋縄では適わない何層にも積み重ねられた「洗練」がある、意図を見破られないように意図された巧妙さ、ノンシャランを気取った「計算」、しかし、その反面、それは分かる人には感じとってもらわなければ困る、賞賛の的になる華やかさを秘めていなければいけない。「洗練」という名の果てしないゲーム、

これを実に手際よく、一筋の汗もみせずにやりおおせたのがビートンだと思う、そして、観客を唸らせるだけの魅力を創り上げることができた、ビートンには生まれながらの華やかさがあったのだ、それは写真や衣装デザインだけでなく、数は少ないが軽いタッチのイラストレーションの筆使いにそれがよく現れているように思う、



ビートンのカバートコート 「洗練の王」、ビートンのワードローブで、私が一番気に入っていて、いかにもビートンらしいと思うのがカバートコート姿だ、

カバートコートそのものが、ちょっとひねくれた都会の「洗練」を匂わせる。タフで丈夫な生地で仕立てられ、ステッチに守られた鎧のようでもあり、しかしエレガントなベルベットの上衿が仕込まれている、デイテールはカントリーテイストを思わせるが、このコートは、都会のどこに着ていっても歓迎される、

しかし、このコートだけはイミテーションは許されない、「正しく」仕立てられていること、そして、その人にあったバランスで完璧に手縫いで仕立てられていること、そしてそれを当然の如く着慣れた風で羽織ること、つまり、生涯、着続ける覚悟で仕立てるべきコートといえる、

このコートには、色んな決まりごとがある、

いつもは、知って知らぬふりをするのが真のエレガントとノンシャランを決め込んでいる着巧者が、カバートコートにだけは口うるさく、その生地、そのデイテール、その適度なフィット感に拘って言葉を重ねはじめる、そういう意味ではテイルコートと似ているかもしれない、

ビートンのカバートコート姿は、なによりそのフィット感が良い、穿ちすぎかもしれないが身体につかずはなれず、誰にも文句を云わせないクラッシックで、かつスノッブな伊達さを保っている、しかし、多分、いまビートンがまだ生きていて、ワードローブへの拘りを問うたとしても、昔から着ているだけだと云うに違いない、


私は先日、面白いカバートクロスを手に入れた。60年代の本格的なもので、織りは申し分ないのだが、これは緑がかった薄い茶をしている。カバートクロスはグレイの濃淡か、フォーン(淡い黄褐色)と限定されるものなのだ。
多分、時代のせいもあって、実のところは、こんな色もあっていいんじゃないか程度で織られたものなのだろうが、これをどう扱って良いのか迷ってしまう、ビートンだったら、どう云ったろう。
 百歳堂日乗




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by momotosedo | 2008-10-05 15:34 | ■dandy style

8月22日(夏日、夕べより涼しく感ず、夕立、雷鳴このところ多し) 美意識、この不条理なもの、、、  




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美意識
この不条理なもの
百歳堂 |  拘り





昨夕(21日)、雷鳴の轟くなか、A氏の来訪たまわる。
A氏は、六義のクライアントのなかでも お洒落にかけては、一、二を争うお人で、独特のスタイルを持ってらっしゃる。

それにフットワークが軽い、ブダペストに行かれたかと思えば、北京のモダンアートのギャラリー村なども覗きに行かれる、ベジタリアン(雑食の私などは尊敬の念にたえない、、)、アスレテイックな身体つき(思わず、自らのお腹をさすってみる、、、)、最近は髪の毛を短く精悍な五分刈りにされた、


そして、強い拘りがある。

A氏は紳士だから、物腰も柔らかく、もの云いも遠まわしだが、その皮膚の裏には強情な拘りが潜んでいる。これは、良いことだと思う。

何故なら、A氏の強靭な拘りは、シンプルに自分の気に入るもの、もっと云うと、自分の美意識をより高みに誘(いざな)ってくれるものを探していると理解できるからだ、、


これは、「オタク」の拘りとは違う、「オタク」が拘りと思っているのは、単に「情報」肥満に過ぎなくて、サイトなどで得た古い、悪い油で揚がった揚げ物のような「情報」を食べ過ぎてメタボリックになっているに過ぎない。ただ、流行(はやり)に左右されるだけで、そこには自らの美意識の遍歴と呼べるものは存在しない。
(それよりは、「詳しいことは知らないけれど、自分の好きなものが欲しい」と云う人の方が「幸せ」には近道するし、作り手にとっても、実はその方が恐い。)

「自分の美意識をより高みに誘ってくれるものを探す」というのは、本気でやろうと思うと大変な労力もいるし、それなりの覚悟もいる。そして、それに答えようとする相手にも恵まれないといけない。

そして、それは少し孤独な作業ではあるが、遍歴を重ね、それを高めながら生きることは自らの存在に栄養と意味を与え、大げさに言えばそれこそが生を受けた愉しみを見出すものではないかな、と思う。

それに、これほどのグローバリゼーションがすすみ凄いスピードで変わりつつある社会を、自分を見失わないで幸せにサヴァイブするためには、「強靭な美意識」こそ唯一頼りにできる装備なのかもしれないと、常々思う。
怒られるかもしれないが、ひところの「スローライフ」などの、アンチテーゼをすればO.K.、逆戻りすれば良い、というクリエイテイブな発想のない「安全な後退策」では元気にはなれないのだと思う。


さて、本日のA氏の拘りは?、、、




f0178697_0431552.jpg「テーラー六義」のサイトで「Made to Measure」を見て、気になったということで、このクラッシック3ボタンを試着されると、不思議に肩、胸周りがA氏にぴったりだった。

それで、選ばれた生地は、私が大切にしていた英国製ビンテージの細かいハウンドツースに赤のオーバープレイド。ハウンドツースは薄いグレーと黒の配色になっている、

六義の生地コレクションは、ひとつひとつ私が各地を旅して選んでいったもので、自分でもよく集められたと思っている、大久保からは、何回も、自分の本当に気に入っているものは隠しておくようにとアドバイスを受けているのだが、

正直な私は、それはアンフェアではないかとそれが出来ないでいる。今回も、少し悔やむ。
でもA氏なら生地も本望か。と自分を納得させる。

前回のA氏につくった、ビスポークスーツ、ピークドラペル、ひとつボタン、ダブルウエストコートのときも、ビンテージの非常に良い糸のチョークストライプを奪われ(?)た、しかも、裏地には、70年代のマルチストライプのオルタリーナのシャツ地を、あまりにぴったりだったので、自ら供してしまった。







f0178697_0435482.jpgおもしろいなと、思ったのは、三つ揃いとともに、それに合わせて、もう一着、ダブルブレステッドのオッドベストも頼みたいと云われたことで、これは着巧者の云うことだなと思った、良いアイデアです。

さて、どんな色が?そこで、選んだのが、これも今はなかなか見つからない、大切にしていた英国のトラデイショナルなカントリースタイル、ビンテージの「ハンテイング ピンク」。これも、少し、悔やむ、、、しつこいか、、

さて、生地が決まったところで、細部の調整、3ボタンは少し低めに落として、スラントはより角度をつける、ラペルはフィッシュマウスにする、裾幅は少し狭めにして、袖のカフはそのまま、、、話し合いながら、次々と、デイテールが決まっていく、、、ここがオーダーメイドの愉しい時間、、、、イメージのなかに、なかなか素敵な、少しビクトリアンなハウンドツーススーツが出来上がる、、、









f0178697_044276.jpg極めつけは、2足目となる、この少しヒネッタ、ボタンアップモンクのビスポークシューズ。

これは、仮縫い靴だが、実際には独特の「ムーンタンニング」という手法でグレーの濃淡に仕上げられる。その「ムーンタンニング」を美しく見せるために、真珠貝のアンテイークボタンを使った(仕上がりには、湖を思わせるブルーに染めたアンテイークボタンがつけられる)ダンデイズムの匂いのするモンクシューズをデザインした。クラッシックさと、捻ったスタイリッシュさが入り混じった姿は、A氏にふさわしいと思う。そして、「やりすぎ」に陥らない、あくまで「ムーンタンニング」の美しさを引き立たせるエレガントな表情、、、ここが、大切、

しかも、これには、最終的にルシアンレザーのように細かいダイヤモンドインレイを全体に施して欲しいというご注文。これは、大久保が一本づつ、細かくコテを使って皮に刻んでいくとことになる。気の遠くなるような作業。

完成時の靴に飾られる、ブルーの真珠貝のアンテイークボタンは、私のボタンコレクションから供される。これは、いまやロンドンのマーケットにも見当たらないものなのですがね、、、言いだしっぺは私なのですが、、、

そして、トウシェイプ、「F1のレーシングカー知っていますか?」
そのF1の何とか云うレーシングカーの先っぽ、膨らんで落ちていくシェイプ、それを確認するために、大久保はサイトを調べ、机の前にはおよそ靴屋らしくないF1カーの勇姿がピンアップされていく、、、

大久保と二人で、この靴について話し合っているとき、ダイヤモンドカットはコテで一本、一本、刻むしかないという結論に、いみじくも、大久保は叫びましたね、

「やってやろうじゃないか!」
(六義は、見た目よりもけっこう男っぽいチームです、、、)


、、、大久保も私も、正直、A氏を愛していますね、それにA氏は愛される人柄だと思います、


好奇心はネコをも殺す、、クライアントの美意識は職人を育てる、、、。

それにしても、「美意識」、この不条理なものよ、、、



(*A氏のご承諾を頂いて、拙文ができました。快いご承諾ありがとうございます。通常は、クライアントの方についてブログに記すことを良しとしませんが、気になる方だったので、ご承諾を得てご紹介いたします。
A氏とは、スタート以来のお付き合いで、いつもお会いすると話題がつきません。今回も、70年代にサビルローでご注文された服を愛する父上のお話など愉しいひと時を過ごさせて頂きました。重ねて、御礼を申し上げます。 百歳堂 敬白)









HARD TALK
美意識
この不条理なもの
百歳堂 |  拘り
copyright 2008 MOMOTOSEDO, Ryuichi Hanakawa

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by momotosedo | 2008-08-23 03:46 | ■dandy style

7月15日(晴天) ライブリーボタンとアンライニングブレーザー



百歳堂日乗



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Button
百歳堂 |  ライブリーボタンとアンライニングブレザー



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よく、かって在った(例えばヨーロッパの)クラッシックな服と、いまの服とどこが違うのですかと聞かれることがあります。
どこが、違うのか?これは言い出せばきりがないほどちがいます。一番違ってしまったのは、実は、いまや服をつくるという気構えが違ってしまっている、ということに尽きるのかもしれません。
気構えがちがってしまったので、もうサビルローでつくろうが、どこでつくろうが満足できるものに当たるのは稀です。もはや、システムそのものが違うのです。
ズット、それが不満でした。

細かいことでいえば、例えば、ボタンです。

タウンスーツのボタンは、ホーンボタンであるべきです。ところが、いまや大概のテーラーでは、「ホーンボタンにしといてね」といわない限りはプラスチックがついてきます。これが気構えの違いです。
ナットボタンやホーンボタンは確かに良質のものはなくなりつつあります。が、それでも探せばまだあります。バッファローホーンは色も表情もさまざまで、そのどれを合わせるかというのもスーツの妙味のひとつです。
ボタンを選ぶ段階で、付属屋さんのサンプル見本ではなく、奥にしまってあった古びた箱から大切そうにボタンが出て来たら、しめたものです。そこは、気構えの良いテーラーです。


気構えというのは、精神論で終わるものではなく、何を具体的にし続けているかということです。

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最近、ご注文を受けたネイビーブレザー。ご要望は、「いつでも、どこでも着たい」「女房は変えるかもしれないが(?)、これは死ぬまで着たい」というブレザー。

生地は英国のジョン・クーパーの「DISCO」という少しドライな、表情の良いダークネイビーを選びました。70年代のものです。
少しウエイトがあって、タイトに良く織られていて、これなら真冬を除いて3シーズン着られます。

スタイルは、、、と言いかけて、或るブレザーを思い出しました。

シングルの3ボタン、3パッチポケット。ココまでは、普通です。しかし、アンライニング。つまり芯地がない、しかも胸のダーツもなし。ダーツがないので、アスレッテイックな型紙とアイロンワークでくせをとり、立体をだします。ほぼ立体裁断。しかし、芯地なし。
肩パッドはパッドの綿を抜いた特性の極く薄いものを入れ、自然で美しい撫で肩のライン。ベンツはなし。


これは、30年代のクラッシックなリゾートブレザーで、例えば、ケイリーグラントもライトウエイトのグレー地のものを「泥棒成金」で愛用しています。

ダーツがなく、芯地がないので、微妙に胸元にドレープが生まれて品の良いカジュアル感があります。クラッシックです。決してナポリ風とは違います。




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、、で、ボタンは?

このブレザーに似合うのは、、、ここは、ひとつ奮発して、とっておきのアンテイークのライブリーボタン、ハンテングボタンをつけましょう。

ライブリーボタンというのは、各家の歴史を表すボタンで、動物モチーフ、各家のモットー(多くの場合ラテン語で記される)を刻んだもの、ユニコーン、ドラゴンなどの想像上の動物のモチーフなど、そのデザインは文字通り多岐にわたりユニークで、コレクターアイテムになっています。欧米には、事実、ボタンコレクターというのが根強くいて、古いものは当然セットにはなってないですから、一個づつで取引されているのです。

ハンテイングボタンもライブリーボタンの一種といえますが、これは自身の領地でおこなわれるハンテング=狩猟を表す領主のボタンです。通常、イニシャルのみか、イニシャルと動物などの絵柄の組み合わせがあります。

とっておきのボタンは、19世紀のもので、珍しくセットになっていたので随分昔に買っておいたものです。良いボタンほど、ちゃんとセットになっているものを見つけるのは難しいのです。


私は、ボタン集めが好きです。この世界は奥深い。単に文様だけでなく昔のものは、ゴールド、シルバーのプレートの仕上げの質感が違います。マットな黒の仕上げもあって、なかなか見つかりませんが私の好みです。
ファーミンとか渋いところではシンプソン&サンとか、いまはないロンドンのボタン屋の仕事を見ていると宝石の老舗にひけをとらない気構えとクリエイテイブを感じます。もう話し出せばきりがない。今度「テーラー六義」のサイトの方に詳しく書き残しておかねばと思っています。


そして、残念ながら日本にはない歴史で、実に良い予想外のボタンがあるにもかかわらず、知っている人が少ない。まして今のテーラーにおいておや、です。

男の「生涯の友人」となるべきブレザーには、こうしたボタンがつけられるべきです。







実はこのブレザー、私もネイビーのものを一着もっています。もう30年近く前にパリのテーラーで仕立てました。いま思えば、このテーラーは、ロンドンのテーラーとは違った意味で男の粋というのをよく知っていたように思えます。
当時のパリは、テッド・ラピドスやスマルト、カルダンが全盛の時期で、私には時折このテーラーがやけに頑固で保守的に映ったものです。しかし、気が付けば、そのブレザーは本当に「いつでも、どこでも」着ていました。いまだに、現役です。

先ず、品が良い。ファッショナブルな集まりでも、保守的な集まりでも自信をもって着られます。
本当は、もう一着欲しいと15,6年前に思ったのですが、そのときにはテーラーは既に引退していました。
それで、いくつかのテーラーで頼もうとしたのですが、不思議なことにイヤがるんですね。やはり、胸のダーツがなくて、芯地がないというところと、微妙なドレープのあり方に難しさを感じるようでした。確かに、仕立ての技術とセンスいかんで本物にもなれば、薄っぺらにもなってしまう怖さがあります。

ところで、私のブレザーについているボタンですが、これにもブロンド美人が絡んでくるチョットしたお話があって、、、、。イヤイヤ、ボタンの話はつきません。



(そのお話は、六義庵百歳堂の「モンマルトルの恋人」の項にあります。)

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by momotosedo | 2008-07-16 00:40 | ■dandy style