2009年 04月 20日 ( 1 )

4月20日(晴)  Tales of the City 1. 「New York 」



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「 Tales of the City


ニューヨークのクリスから、何度もメールが届いている、今度はいつニューヨークに戻ってくるんだ、ウマいマテイーニが待ってるゾ、

たしかに、午後の4時から5時あたり、夕食にはまだ間があって、みんな一仕事も終えて、街角にはまだ陽光も残っている宙ぶらりんな時間に、気の置けない友人と36丁目のキーンズあたりの信用がおける、かつちょっとザワついてもいるような店で飲むマンハッタンのマテイーニは旨い、

それは、説明しづらいが、私がニューヨークで一番、好きな時間と場所だといえるかもしれない、
いや、いまや言葉のその純粋な意味で、愛しているともいえる、


「 Tales of the City



なぜなら、その数杯のマテイーニの後に訪れるレストランや、ナイトクラブは、エルモロッコやストークからグラマシータバーンなどへ移り、友人や知人の顔にしてもこの何十年では変わらざるを得なかったけれど、

ガラス窓の向こうに覗くマンハッタンの街も、夜のひと騒ぎの前になんだかしばし気を抜いているように見えるその時間のマテイーニだけは、ズット変わりはしていないのだから、

歳をとっていく良さは、若いときには無駄な時間と思えたものが、実はそれこそが愛(いと)しく、人生の大切にすべき時間だと気付かせてくれることだ、肩の力が抜けるというのは、こういうことかな、ともかく、若いときとは違う真実というのが時折、分かりそうになる、

私は、なみなみと注がれたグラスに口をつけてドライで新緑の葉を思わせる味を愉しんでから、グラスの底に沈没しているオリーブを引き上げてやってひと齧りする、


マンハッタンを離れるとき、窓の下に小さくなっていく摩天楼を眺めながら思い出すのは、いつも決まって、このマテイーニ漬けのオリーブのひと齧りだ、


「 Tales of the City




「ニューヨーカー」の名物コラム「Talk of the Town」で知られる作家E.B.ホワイト(「スチュアート リットル」の原作者でもある)は、1948年に「Here is NewYork」というタイトルでこの街をリリカルに語っている、それは、「7500文字のニューヨークへのセレナーデ」、ともいえて美しい、

そのなかで、ホワイトはこの街を‘the gift of loneliness and the gift of privacy’と謳っているが、
それから40年余り後、ホワイトの継息子で、同じく「ニューヨーカー」の名物コラムニストだったロジャー・エンジェルは、「メトロポリタン美術館の日々の込み具合をみていると、ここにはプライベートといえるものはヒトカケラもないことが分かる、マンハッタンの交通渋滞に巻き込まれて車のなかで味わう孤独以外は、、」と皮肉るようにニューヨークはその世代やクラスによって違った顔を持っている、


その一方で、セントラルパークから望む、マジェステイックや、ベレスフォード、サンレモ、エルドラドといういささかエキゾチックな名前がついたボザール様式の建物が織りなすスカイラインは、人間が作った最も美しい「地平線」として、いつも変わらず心を奪う、


「 Tales of the City



ニューヨークに行けば、必ず一緒に食事を共にして、その昔話を愉しみにしている老ダンデイ氏が語るように、いつも大きな黒いサングラスと帽子に身を隠していたサットンプレイスのグレタ・ガルボや、エル・モロッコで一人きりでヘラルドトリビューンを読みながら昼食を摂っていたオナシスなど、ニューヨークは、いつの時代もこの街を愛するセレブリテイーには事欠かない、

そういう少しは上品な「金持ち」は、いまもこの街を愛しながら、ひっそりとアッパーイーストやアッパーウエストに暮らしている、

彼らがどうしてこの街を愛して離れたがらないのか、その同じような理由で私は、まだ陽の残る夕暮れ前の、そのマテイーニを愛しているのだと思う、
それは、起き抜けにルームサービスで頼む一杯のシャンパンとも似ているようで違う、
そして、それは言葉を尽くして説明するものでもないと私は思っている、味わうべきものだ、


充分、歳を経てきたと云える私は、フィフィスアベニューでの散財や、ブロードウエイの夜や、ソーホーのナイトクラブの香水の匂いなどは、もうどうでも良い、頑固さを増してきたライフスタイルは、正直にいって旅先の街にも溶け込み難くなっている、


その私が、ニューヨークという街と幾らか溶け込みあうのが、多分、そのマテイーニのオリーブをひと齧りする瞬間なのかもしれない、その時、私はつくづくこの街のこの瞬間が好きだと思える、いや、生きてるうちにあと何回か味わっても良い、人生の人間らしい愛すべき時間だと思える、それは、たしかに、このニューヨークでしか味わえない「a gift」、「街の贈り物」なンだ、



R.H.

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by momotosedo | 2009-04-20 23:51 | ■Tales of the City