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12月11日(晴天、今年は暖冬だそうだ) 「太った鴨と21世紀のテーラー」  エルブリとファットダック




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最初に運ばれたのは、球形の硝子のコップにはいった「水」だった、
ピレネーの山から流れた水、そしてそれを黒いストロー、と思ったのは実はバニラステイックで出来たストローで、飲むと口のなかに清冽な味が広がっていき、特別な食事の始まりを知らせる、
或いは、、、次の料理をワクワクしながら待っていた私たちに運ばれたのは、海の貝殻がひとつづつ、その中を探るとIPODのイヤホンが、、、耳に当てると潮騒が遠く聞こえる、しばし白砂のビーチを想いだしていると、箱庭の海岸のような一皿が、、、タピオカで創られた砂浜に縁取られて、鰻の稚魚、雲丹、蛤、蛎が、海藻からとられたソースの「エア」(泡)でくるまっている、




エルブリとファットダック、どちらもミシュランで世界のベストレストランに選ばれている、そして多分、最も予約困難なレストランとしても有名で、それはニューヨークのグラマシータバーンなどは足元にも及ばないほど困難、ほとんど不可能ともいえる、


ファットダックはロンドンから一時間ほどの田舎町ブレイ村に、エルブリはスペイン、カタルニア地方の小さな入り江に面したロサスにある、大都会の真ん中にあるわけではない、しかし、「料理」の「最先端」がそこにある、




あまりに予約困難で、世界中のグルマンにとってもはや「伝説」となったエルブリは、4月から9月までの半年間しか営業しない、後の半年は新しい料理の「開発期間」に当てている、エルブリの厨房スタッフは55人、レストランのテーブルは50席にも満たない、なんでもスタッフのなかには科学者もいるそうだ、


「科学」、、、そうエルブリも、ファットダックも、いままで味わったことのない「革新的」な料理を目指している、例えば、エルブリの名物料理である「メロンの偽キャビア」は、塩化ナトリウムや、ジェルの素にもなる海藻成分がはいった「水」にメロンのピューレを垂らしてつくられる、そしてそれは、本物のキャビア缶を模した、エスプリが効いた「オリジナルの偽キャビア」缶につめられ、パッションフルーツのソースをかけられて供えられる、
ファットダックでは、「箸休め」で出される「HOT AND ICED TEA」は、まさしく熱い茶と、冷たい茶がひとつのグラスのなかで混じることなく交互に現れるマジックのような仕掛けになっている、


しかも、ここでは、オリーブの実に見えるものが、実はそれを正確に模したジェリーで、口に入れて迷っていると弾けて中からオリーブのジュースが噴き出すというのは序の口で、柔らかいと思ったものが堅く、しかし、実は柔らかく(?)もあり、冷たいと思ったアイスは、意外に冷たくなく、しかし、しばらくすると固形ではなく、空気の冷たさを持っている、、、という風にまるで科学実験のように観念を裏切る未知な世界に連れ込まれる、






アプローチが全く違うのだ、そして、旨い、「革新」がいままで味わったことのない食感、風味に結実している、だから並み居る強豪を抑えて、ベストレストランに何回も選ばれているのだろうが、正直にいうと、当初は私は珍しさが無くなれば、飽きてしまうだろうとおもっていた(といっても、どちらも一度しか行ったことがない、予約が難しいのです、)、しかしいい加減なコケ脅しの革新ではなく、迫力が違う、へそ曲がりで疑い深いグルマンもねじ伏せる力がある、
もはや、トゥールダルジャンなどの伝統のクラッシックも、ピエール・ガニエールなどのヌーベルキュジインヌやアジアンテイストとの複合も、置いてきぼりを食ったような印象を与える、力強い革新なのだ、




そして、「一口で食べてください」とか「三口を想定して食べてください」とか「指示」されるのはまだしも、IPODや、オークの香りのするフィルムを含んで、ドライアイスの煙をたてるオークの苔をテーブルにおいて「香り」を楽しみながらフォアグラとトリュフのトーストを食べるというふうに、五感を刺激するテーブルアプローチも今までの常識を覆していて、かつ愉しい驚きがある、ファットダックのコースの中には、箱詰めにされたシリアルの袋を取り出して自分でつくって食べるというのもあった、



この二店を見る限り、「料理」はすでに、別次元の21世紀スタイルに自信満々に入っている、


「エルブリ」のウエブは、最新のアーテイストと同様に刺激的でさえある、
(タグをクリックしたとき最初に現れる印象的なショートビデオは、クリックする度に別バージョンが現れる工夫もなされている、)


そんなコトを考えたのも、近頃のテーラー「業界」のことを思ったからだ、まだ10年前と同じことを繰り返していないか、或いは30年前と比べると、逆に後退さえしていないか、


来年用の50年代のシルク、コットンという思い込みを裏切るビンテージコットン、古の「ソフトテーラリング」用の型紙、、、テーラリングというのはマダマダみんな知らないものが多い、クラッシックは貴方が思っている以上に奥が深い、


アンテイークの紋章が刻まれたメタルボタンのひとつひとつ、古の生地の織りのひとつひとつ、昔日のまっとうなテーラーのひと針ひと針を確かめることから、私なりの「革新」を始めたい、









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レポーターがいまいちですが、「エルブリ」のコースの一端がバーチャルに楽しめます、8分余りと少し長いですが、実際には35~6品、デイナーには約4時間あまりかかります、一種の革新に溢れたタパスの連続で、いわゆるスターター、メインという形式に囚われていません、かなり自由に「デイナーを愉しむ」ということが解釈されていて、そしてメニューのつながりが、驚きを与えることをも含めて綿密に計算されています、

私が食べたメロンの「偽キャビア」は、この日は「オレンジの偽キャビア」になっています、やはり、シーズンによって変えるのでしょうね、では、ボナペテイ、、、









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by momotosedo | 2008-12-11 09:37 | ■21st Century Style


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