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10月31日  最高のスーツ



momotosedo`s
21st Century
Idea








MOMOTOSE
DO A DAY









スーツで思い出しましたが、この間、取材で面白い質問を聞かれました、「ところで、椛川さんにとって最高のスーツとはなんでしょう?」、

これが、何年か前なら、スーパー200のパシュミナのごく柔らかい仕立ての、、、てなことを云う人がいそうですが、私の考えはもとより違います、


これは、私の体験から言いますが、先ず「そのテーラーが面白い」ことです、

ビスポークは生地選びからはじまって、スタイルの相談、仮縫いとどうしても「付き合い」が生じますから、話していて面白いテーラーじゃないと信頼もできないし、続きません、
スーツはどうでも良いと言っているのではありません、ビスポークのスーツというのは、テーラーをも含めたもので、だからクセになるし、良いものが出来上がるのです、ビスポークスーツは、生涯着るべきものですから、そのメインテナンスもあります、


では、「面白い」というのはどういうことか、先ず、私は良いスーツが欲しい、そして、ビスポークすることによって、ストレス発散、できれば明日の活力、元気をもらいたい、

先ず、生地はうなるほど持っていてほしい、それも、熟成したクラレットのように各年代の優れものが揃っていて、時には、こんなものもありますと、棚の奥から秘密めいて逸品がでてきたりするのがヨロシイ、現行のバンチしかもっていないのは問題外ですね、前にも云ったかもしれませんが、バンチというのは選んでいる姿も何か貧相でイヤなんです、


それで、その生地たちが目の前で次々にサっと広げられる、手のなかで溶けてしまいそうなカシミア、逆にタイトに織られたビンテージの絵画のように美しいツイード、、、良いですね、良い生地をみるのはそれだけで愉しい、

採寸も終わった、生地も迷ったあげくビンテージのタイトに織られているが、アルパカが混ざって驚くほど柔らかいツイードに決めた、さあ、次はスタイルの相談です、ここでテーラー氏は、「生地を見続けてお疲れでしょう、まあ一服いたしましょう、」と拍手をポンポンとうつと、ぴったりしたチャイナドレスに身を包んだグレース・ケリー似のブロンドが、中国茶の一式を掲げてどこからか現れる、「最初は香りだけお味わいください、」とか、ブロンドが手づから入れてくれる奥深い茶を味わいながら、「実は、あのツイードはスコットランドのある一軒の家の屋根裏に眠っておりまして、、、」と、ツイードを手にいれた冒険譚を、テーラー氏が語り始める、、ふむふむと、その面白い語り口に引き込まれている間に、話はいつのまにかスーツのスタイルになっていて、シングルのウエストコートも良いけれど、ダブルのウエストコートを合わせるのも味わい深いものです、ポケットもハーフムーンで、そうそう、うちのハーフムーンポケットは、今のものと違って古のスタイルを守っています、、、などと、スタイルが自然に決まっていく、最後にサラサラとテーラー氏はスケッチを描き、私は、ツイードスーツでありながらエレガントともいえるスタイルに期待に胸ふくらませながらアトリエを辞す、



それからしばらくたって、庭でバサバサという音がするのに驚いて、何事かと思って覗くと、木の枝に小さな王冠をかぶった鷹が一羽とまっていて、鋭くこちらを見つめて私を確認すると、またたく間に、飛び去っていってしまった、あっけにとられて、区の保安課にでも電話しようかと思っていると、木の下に一通の封筒が落ちているのに気づいた、拾って、朱の紋章入りの封蝋をきると、達筆で、あのテーラーから、仮縫いができました、いつでもお越し下さいとしたためてある、

随分、大げさじゃないかと思いつつ、私はアトリエを再訪することにした、



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by momotosedo | 2008-10-31 01:49 | ■最高のスーツ


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