8月22日(夏日、夕べより涼しく感ず、夕立、雷鳴このところ多し) 美意識、この不条理なもの、、、  




dandy style
美意識
この不条理なもの
百歳堂 |  拘り





昨夕(21日)、雷鳴の轟くなか、A氏の来訪たまわる。
A氏は、六義のクライアントのなかでも お洒落にかけては、一、二を争うお人で、独特のスタイルを持ってらっしゃる。

それにフットワークが軽い、ブダペストに行かれたかと思えば、北京のモダンアートのギャラリー村なども覗きに行かれる、ベジタリアン(雑食の私などは尊敬の念にたえない、、)、アスレテイックな身体つき(思わず、自らのお腹をさすってみる、、、)、最近は髪の毛を短く精悍な五分刈りにされた、


そして、強い拘りがある。

A氏は紳士だから、物腰も柔らかく、もの云いも遠まわしだが、その皮膚の裏には強情な拘りが潜んでいる。これは、良いことだと思う。

何故なら、A氏の強靭な拘りは、シンプルに自分の気に入るもの、もっと云うと、自分の美意識をより高みに誘(いざな)ってくれるものを探していると理解できるからだ、、


これは、「オタク」の拘りとは違う、「オタク」が拘りと思っているのは、単に「情報」肥満に過ぎなくて、サイトなどで得た古い、悪い油で揚がった揚げ物のような「情報」を食べ過ぎてメタボリックになっているに過ぎない。ただ、流行(はやり)に左右されるだけで、そこには自らの美意識の遍歴と呼べるものは存在しない。
(それよりは、「詳しいことは知らないけれど、自分の好きなものが欲しい」と云う人の方が「幸せ」には近道するし、作り手にとっても、実はその方が恐い。)

「自分の美意識をより高みに誘ってくれるものを探す」というのは、本気でやろうと思うと大変な労力もいるし、それなりの覚悟もいる。そして、それに答えようとする相手にも恵まれないといけない。

そして、それは少し孤独な作業ではあるが、遍歴を重ね、それを高めながら生きることは自らの存在に栄養と意味を与え、大げさに言えばそれこそが生を受けた愉しみを見出すものではないかな、と思う。

それに、これほどのグローバリゼーションがすすみ凄いスピードで変わりつつある社会を、自分を見失わないで幸せにサヴァイブするためには、「強靭な美意識」こそ唯一頼りにできる装備なのかもしれないと、常々思う。
怒られるかもしれないが、ひところの「スローライフ」などの、アンチテーゼをすればO.K.、逆戻りすれば良い、というクリエイテイブな発想のない「安全な後退策」では元気にはなれないのだと思う。


さて、本日のA氏の拘りは?、、、




f0178697_0431552.jpg「テーラー六義」のサイトで「Made to Measure」を見て、気になったということで、このクラッシック3ボタンを試着されると、不思議に肩、胸周りがA氏にぴったりだった。

それで、選ばれた生地は、私が大切にしていた英国製ビンテージの細かいハウンドツースに赤のオーバープレイド。ハウンドツースは薄いグレーと黒の配色になっている、

六義の生地コレクションは、ひとつひとつ私が各地を旅して選んでいったもので、自分でもよく集められたと思っている、大久保からは、何回も、自分の本当に気に入っているものは隠しておくようにとアドバイスを受けているのだが、

正直な私は、それはアンフェアではないかとそれが出来ないでいる。今回も、少し悔やむ。
でもA氏なら生地も本望か。と自分を納得させる。

前回のA氏につくった、ビスポークスーツ、ピークドラペル、ひとつボタン、ダブルウエストコートのときも、ビンテージの非常に良い糸のチョークストライプを奪われ(?)た、しかも、裏地には、70年代のマルチストライプのオルタリーナのシャツ地を、あまりにぴったりだったので、自ら供してしまった。







f0178697_0435482.jpgおもしろいなと、思ったのは、三つ揃いとともに、それに合わせて、もう一着、ダブルブレステッドのオッドベストも頼みたいと云われたことで、これは着巧者の云うことだなと思った、良いアイデアです。

さて、どんな色が?そこで、選んだのが、これも今はなかなか見つからない、大切にしていた英国のトラデイショナルなカントリースタイル、ビンテージの「ハンテイング ピンク」。これも、少し、悔やむ、、、しつこいか、、

さて、生地が決まったところで、細部の調整、3ボタンは少し低めに落として、スラントはより角度をつける、ラペルはフィッシュマウスにする、裾幅は少し狭めにして、袖のカフはそのまま、、、話し合いながら、次々と、デイテールが決まっていく、、、ここがオーダーメイドの愉しい時間、、、、イメージのなかに、なかなか素敵な、少しビクトリアンなハウンドツーススーツが出来上がる、、、









f0178697_044276.jpg極めつけは、2足目となる、この少しヒネッタ、ボタンアップモンクのビスポークシューズ。

これは、仮縫い靴だが、実際には独特の「ムーンタンニング」という手法でグレーの濃淡に仕上げられる。その「ムーンタンニング」を美しく見せるために、真珠貝のアンテイークボタンを使った(仕上がりには、湖を思わせるブルーに染めたアンテイークボタンがつけられる)ダンデイズムの匂いのするモンクシューズをデザインした。クラッシックさと、捻ったスタイリッシュさが入り混じった姿は、A氏にふさわしいと思う。そして、「やりすぎ」に陥らない、あくまで「ムーンタンニング」の美しさを引き立たせるエレガントな表情、、、ここが、大切、

しかも、これには、最終的にルシアンレザーのように細かいダイヤモンドインレイを全体に施して欲しいというご注文。これは、大久保が一本づつ、細かくコテを使って皮に刻んでいくとことになる。気の遠くなるような作業。

完成時の靴に飾られる、ブルーの真珠貝のアンテイークボタンは、私のボタンコレクションから供される。これは、いまやロンドンのマーケットにも見当たらないものなのですがね、、、言いだしっぺは私なのですが、、、

そして、トウシェイプ、「F1のレーシングカー知っていますか?」
そのF1の何とか云うレーシングカーの先っぽ、膨らんで落ちていくシェイプ、それを確認するために、大久保はサイトを調べ、机の前にはおよそ靴屋らしくないF1カーの勇姿がピンアップされていく、、、

大久保と二人で、この靴について話し合っているとき、ダイヤモンドカットはコテで一本、一本、刻むしかないという結論に、いみじくも、大久保は叫びましたね、

「やってやろうじゃないか!」
(六義は、見た目よりもけっこう男っぽいチームです、、、)


、、、大久保も私も、正直、A氏を愛していますね、それにA氏は愛される人柄だと思います、


好奇心はネコをも殺す、、クライアントの美意識は職人を育てる、、、。

それにしても、「美意識」、この不条理なものよ、、、



(*A氏のご承諾を頂いて、拙文ができました。快いご承諾ありがとうございます。通常は、クライアントの方についてブログに記すことを良しとしませんが、気になる方だったので、ご承諾を得てご紹介いたします。
A氏とは、スタート以来のお付き合いで、いつもお会いすると話題がつきません。今回も、70年代にサビルローでご注文された服を愛する父上のお話など愉しいひと時を過ごさせて頂きました。重ねて、御礼を申し上げます。 百歳堂 敬白)









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copyright 2008 MOMOTOSEDO, Ryuichi Hanakawa

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by momotosedo | 2008-08-23 03:46 | ■dandy style


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