7月15日(晴天) ライブリーボタンとアンライニングブレーザー



百歳堂日乗



dandy style
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百歳堂 |  ライブリーボタンとアンライニングブレザー



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よく、かって在った(例えばヨーロッパの)クラッシックな服と、いまの服とどこが違うのですかと聞かれることがあります。
どこが、違うのか?これは言い出せばきりがないほどちがいます。一番違ってしまったのは、実は、いまや服をつくるという気構えが違ってしまっている、ということに尽きるのかもしれません。
気構えがちがってしまったので、もうサビルローでつくろうが、どこでつくろうが満足できるものに当たるのは稀です。もはや、システムそのものが違うのです。
ズット、それが不満でした。

細かいことでいえば、例えば、ボタンです。

タウンスーツのボタンは、ホーンボタンであるべきです。ところが、いまや大概のテーラーでは、「ホーンボタンにしといてね」といわない限りはプラスチックがついてきます。これが気構えの違いです。
ナットボタンやホーンボタンは確かに良質のものはなくなりつつあります。が、それでも探せばまだあります。バッファローホーンは色も表情もさまざまで、そのどれを合わせるかというのもスーツの妙味のひとつです。
ボタンを選ぶ段階で、付属屋さんのサンプル見本ではなく、奥にしまってあった古びた箱から大切そうにボタンが出て来たら、しめたものです。そこは、気構えの良いテーラーです。


気構えというのは、精神論で終わるものではなく、何を具体的にし続けているかということです。

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最近、ご注文を受けたネイビーブレザー。ご要望は、「いつでも、どこでも着たい」「女房は変えるかもしれないが(?)、これは死ぬまで着たい」というブレザー。

生地は英国のジョン・クーパーの「DISCO」という少しドライな、表情の良いダークネイビーを選びました。70年代のものです。
少しウエイトがあって、タイトに良く織られていて、これなら真冬を除いて3シーズン着られます。

スタイルは、、、と言いかけて、或るブレザーを思い出しました。

シングルの3ボタン、3パッチポケット。ココまでは、普通です。しかし、アンライニング。つまり芯地がない、しかも胸のダーツもなし。ダーツがないので、アスレッテイックな型紙とアイロンワークでくせをとり、立体をだします。ほぼ立体裁断。しかし、芯地なし。
肩パッドはパッドの綿を抜いた特性の極く薄いものを入れ、自然で美しい撫で肩のライン。ベンツはなし。


これは、30年代のクラッシックなリゾートブレザーで、例えば、ケイリーグラントもライトウエイトのグレー地のものを「泥棒成金」で愛用しています。

ダーツがなく、芯地がないので、微妙に胸元にドレープが生まれて品の良いカジュアル感があります。クラッシックです。決してナポリ風とは違います。




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、、で、ボタンは?

このブレザーに似合うのは、、、ここは、ひとつ奮発して、とっておきのアンテイークのライブリーボタン、ハンテングボタンをつけましょう。

ライブリーボタンというのは、各家の歴史を表すボタンで、動物モチーフ、各家のモットー(多くの場合ラテン語で記される)を刻んだもの、ユニコーン、ドラゴンなどの想像上の動物のモチーフなど、そのデザインは文字通り多岐にわたりユニークで、コレクターアイテムになっています。欧米には、事実、ボタンコレクターというのが根強くいて、古いものは当然セットにはなってないですから、一個づつで取引されているのです。

ハンテイングボタンもライブリーボタンの一種といえますが、これは自身の領地でおこなわれるハンテング=狩猟を表す領主のボタンです。通常、イニシャルのみか、イニシャルと動物などの絵柄の組み合わせがあります。

とっておきのボタンは、19世紀のもので、珍しくセットになっていたので随分昔に買っておいたものです。良いボタンほど、ちゃんとセットになっているものを見つけるのは難しいのです。


私は、ボタン集めが好きです。この世界は奥深い。単に文様だけでなく昔のものは、ゴールド、シルバーのプレートの仕上げの質感が違います。マットな黒の仕上げもあって、なかなか見つかりませんが私の好みです。
ファーミンとか渋いところではシンプソン&サンとか、いまはないロンドンのボタン屋の仕事を見ていると宝石の老舗にひけをとらない気構えとクリエイテイブを感じます。もう話し出せばきりがない。今度「テーラー六義」のサイトの方に詳しく書き残しておかねばと思っています。


そして、残念ながら日本にはない歴史で、実に良い予想外のボタンがあるにもかかわらず、知っている人が少ない。まして今のテーラーにおいておや、です。

男の「生涯の友人」となるべきブレザーには、こうしたボタンがつけられるべきです。







実はこのブレザー、私もネイビーのものを一着もっています。もう30年近く前にパリのテーラーで仕立てました。いま思えば、このテーラーは、ロンドンのテーラーとは違った意味で男の粋というのをよく知っていたように思えます。
当時のパリは、テッド・ラピドスやスマルト、カルダンが全盛の時期で、私には時折このテーラーがやけに頑固で保守的に映ったものです。しかし、気が付けば、そのブレザーは本当に「いつでも、どこでも」着ていました。いまだに、現役です。

先ず、品が良い。ファッショナブルな集まりでも、保守的な集まりでも自信をもって着られます。
本当は、もう一着欲しいと15,6年前に思ったのですが、そのときにはテーラーは既に引退していました。
それで、いくつかのテーラーで頼もうとしたのですが、不思議なことにイヤがるんですね。やはり、胸のダーツがなくて、芯地がないというところと、微妙なドレープのあり方に難しさを感じるようでした。確かに、仕立ての技術とセンスいかんで本物にもなれば、薄っぺらにもなってしまう怖さがあります。

ところで、私のブレザーについているボタンですが、これにもブロンド美人が絡んでくるチョットしたお話があって、、、、。イヤイヤ、ボタンの話はつきません。



(そのお話は、六義庵百歳堂の「モンマルトルの恋人」の項にあります。)

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by momotosedo | 2008-07-16 00:40 | ■dandy style


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